20240421 東京旅行(セララバアド)

東京へ弾丸旅行してきたぞ!
目的はセララバアド。分子ガストロノミーという一風変わった料理を提供している高級店。
オモコロでナクヤムパンリエッタさんと恐山さんがそれぞれ記事や動画で話されていたので、気になって友達と行ってみた。
 
朝から高速バスで5時間かけて東京まで行ったけど、これは夜行バスでもよかったかもしれない。友達が乗り物で寝られない体質だったのでずっと話していたけど、これは沈黙に耐えられないための会話な部分もあった。その友達と話すのは好きだけど、常に会話しなければいけない圧に晒され続けて必要に駆られて話すのは、疲れるのでよくない。あと、せっかくの昼を移動で潰してしまうのは勿体ない。今度からは長距離の移動には他の手段を考えよう。
 
バスを降りてからちょっと時間があったので、ポケセンに寄った。休日というのもあり、新宿から渋谷への道中はテーマパークの待機列のように人でごった返していた。
ポケセンは要所要所に大きめのポケモンのぬいぐるみがあってかなりよかった。みがわり人形は欲しい。
コジオの塩入れを買った。良い買い物をした。
 
道中で大きめの柱がいくつも立っていた。エンドラが回復するための柱。ケーも予約開始していた。
 
セララバアドに着いた。
 予約時間が近づくにつれて、点々と客が集まってきた。客の多くはブランドものの衣服を身に纏っており、そうでなくてもその立ち振る舞いから、私たちとは社会的断絶があるのだと容易に想像できる。
予定時刻になると、店員が扉を開けて案内する。道路の奥まった場所にある店への通路は綺麗に舗装されており、観葉植物で装飾されている。店員の礼儀正しい挨拶にたどたどしく会釈で返し、一番奥のテーブルで着席する。
 
 店の中はシックな木材の壁材が暖かい店内照明で照らされており、全体として落ち着いた雰囲気を感じさせる。ウォールシェルフにはいくつかの賞状や表彰盾が飾られている。ずらっと並んでいる多言語で書かれた本は、きっと全て店の紹介文が載っているのだろう。
提供される料理の珍妙さを楽しみに来た私たちは、早くも想定していたものとは異なる緊張を感じずにはいられなかった。
 
[桜]
桜をイメージした、というより桜そのもの。可食部は蕾を模したオリーブと、生ハムの巻かれた枝のような部位のみ。
食べてみると、枝の部分はおっとっとのようなパリッとしたスナックであり、生ハムと酒によく合う味であった。しかし、前評判として「口の中が広がる」「これまでに全くしたことのないような経験」というものを聞いていた分、私のこれまで食べてきた料理のデータベースから検索できる、理解できる範疇の料理だったので、少し残念に思う私もいた。とても美味しくはあったので、これからは真っ直ぐに高級料理の味を楽しもうと気持ちを切り替えた。

 
 次に食卓に運ばれたのは、「目覚めの涙」「芽吹き」「雪解け」そして「誕生」。大きめのプレートには若草が敷き詰められており、丸太の上に「目覚めの涙」、石の上に「芽吹き」…...といったように、点々と料理が盛り付けられていた。
 
[目覚めの涙]
一滴の透明なわらび餅のようなものが、丸太の上に置かれているレンゲにちょこんと乗っかっていた。
もちっとした感触の餅のものであろうという予測をしながらレンゲを口に運び、その涙を嚙んだ瞬間に、この店に対する期待はブワッと一気に膨らんだ。涙が口の中ではじけたのだ。一瞬、口腔を瑞々しく潤わせ、その後はそれを包んでいた被膜が残るのみであった。
 
[芽吹き]
ピンポン玉ほどの大きさの丸い苔から芽が顔を出していた。コロッケのような味がしたが、ほのかに新緑の青臭さを感じた。
 
[雪解け]
「雪解け」は容器の中に雪を模した何かが入っており、その中に枝の刺さったサーモンが埋もれていた。雪は少しづつ溶け始めていた。サーモンと一緒にその雪を食べた。雪の中に溶けて硬くなった芯のような部分があり、表現のためにここまでの拘りを見せてくれるのかと感動した。
 
[誕生]
「誕生」は透明なカプセルのようなものにヤシの木と、その木の下に可食部であるウズラ大の卵の巣が佇んでいた。
形は卵だったものの、食べてみると卵の味はせず、誕生をコンセプトにした未知の味が巣のパリパリとした食感と共に広がった。

 
[タコス 白魚]
おばあちゃんの家にあるような自然が描かれたブリキの容器の中にはシルクの生地が引かれており、その上に小ぶりのタコスが鎮座していた。
タコス、とは銘打っているものの、白魚と薄皮でさっぱりとした食感であり、これまでに食べたタコスとは異なっていた。この食べ物を形容するときに形の一番近いものがタコスであったために、タコスと名付けられたように感じた。
 
[春の高原]
ドーナツ状の皿に花が盛り付けられている。自分の感性がショボいせいで、トイレの芳香剤を強く想起してしまった。トイレの芳香剤は花畑をモチーフにしているものが多いので、本当は花畑の香りなんだと思う。

 
[春の大地]
春の高原が花畑だったので、春の大地は土なのではないかと友達と予想していたが、本当に土(畑)だった。この土が本当にすごく、友達が一口食べると「祖父母の家で育てていた野菜を洗っている」という記憶が思い起こされたのだという。自分はそれを聞いて半信半疑で食べてみたが、「祖父母に連れられて行ったゴルフ場で祖母と一緒につくし狩りをしている」記憶がまざまざと蘇ってきたので、本当に単なる食べ物を超えた経験だった。

 
[筍 蛍烏賊]
たけのこの器の中に筍とホタルイカの料理がある。筍がコリコリ、ホタルイカがくにゅくにゅした歯ごたえでおいしかった。

 
[桜海老 うど]
うどは「うどの大木」のうど。さわやかな味がしておいしかった。この辺りは純粋にまっすぐにおいしい料理が続く。

 
[春霞 あいなめ]
春霞。春の季節にたなびく霞。まさか仙人になるのか!?とか冗談で言っていたが、本当に霞を食べることになるとは思わなかった。
スープの具材がまず届いた。その具材の上には、「春香り漂う」と海苔で書かれたシートが乗っていた。次に液体が注がれ、暫く待っていると、ポットのようなものから霞が注がれた。気体だった。
まさか気体が注がれるとは思わなかった。「霞が晴れたらお召し上がりください。」レストランで聞く言葉じゃない。興奮したオタクの息で霞が晴れてしまって悲しかった。
バラバラになった「春香り漂う」が、言葉を使ったデザインアートのように見えた。

 
[ほろほろ鶏]
ほろほろした鶏。おいしかった。書きながらお腹が減ってきた。

 
[蕗の薹]
全然漢字が読めなかった。ふきのとう。
桜と蕗の薹のどちらかを選択することができたが、まだ知らない世界を体験したかったので蕗の薹にした。
ブリュレと焼き菓子とアイス。当然だが、それぞれ見た目通りの味がしたが、それと同時に吹き抜けるような若草の味が口の中に広がった。

 
[和紙・抹茶・不知火]
枯山水のケースの中に、和菓子が点々と置かれている。
和紙は甘く、飴のような感触で、舌ですっと溶けていった。
抹茶は見た目から想像もできないくらい皮が薄く、瑞々しかった。

 
これまでに料理の場で体験したことのない経験ができた。
帰りに代々木八幡宮に寄った。境内の入り口に猫が2匹いた。拝殿が妖しく光を放っていた。このまま今日がずっと続いてくれたらいいと願った。
代々木公園を経由して帰ったが、静かな公園から徐々にヒップホッパーのたまり場へと風景が移ろい、現実に戻ってきた感じがした。
帰り際に友達と、季節の変わり目に毎回来たいという話をした。行けると良いな。