20240222 佐藤青南『一億円の犬』1章感想

主人公・梨沙はSNS上で東京住で優しい夫と犬を持つ富裕層という設定の妄想アカウントを持つ一般独身貧困女性なのですが、犬のエッセイ漫画がバズってしまい、嘘を塗り重ねまくるという虚言癖のカスの話です。
小説の主人公ってある程度自分なりの考えがあって品行方正であるイメージがあったのですが、この主人公は思った以上にカスでした。考えてみれば太宰治の『人間失格』や芥川龍之介の『河童』など、おおよそ正気ではない人間が主人公になることはままあることのような気がしますが、この小説は現代のSNSを舞台にしている関係上、「いるわ~」というリアリティが他より生々しく感じられました。
常に微妙に人を見下していたり、SNSのサブ垢で自分のバズったツイートに水増ししていたり、嘘がバレそうになると高圧的になることでごまかしたり…嫌だけどこういう人いるよな、という人間観察をするような気持ちで読んでいます。
まだ1章までで、この作品の肝であるミステリーまで到達していないので続きが楽しみです。